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小さいことを記述している。しかし、筋活動のコーディネーションを扱った多くの研究は、最大努力での運動を対象としており、運動の強度を高めていくときに筋活動がどのように変化するのかを観察したものは少ない。
ところで、立ち幅跳びのような多関節運動でみられる筋活動の特徴を理解するためには、個々の単関節運動の筋活動の特徴を理解しておくことが役立つと考えられる。単関節運動における、筋活動の特徴については、例えばHagoodら2)が、膝関節伸展動作の運動範囲の後半で見られる主働筋と拮抗筋の共縮を、過伸展を防ぐためのブレーキングであると述べている。この例では、膝関節の伸展動作において、主働筋の活動中、拮抗筋の活動が一概に抑制されるわけではないことが示されている。
そこで本研究では、強度を漸増させる立ち幅跳びを行ったときの、下肢筋の活動を分析し、その活動の変化の特徴をとらえることを目的とした。また、同一の被検者に対し、立ち幅跳びの主要な動作のひとつである足底屈動作をとりあげ、これを単関節運動として行ってもらい、そのときの筋活動の特徴に注目して、立ち幅跳びでの筋活動の特徴を理解することに努めた。

研究方法

被検者は本研究への参加同意を得た健康な男子大学生7名(年齢21.6±1.3歳、身長171.4±3.9cm、体重66.9±9.0kg、平均値士標準偏差)であつた。被検者には人工芝のマット上で30秒に1回のぺースで立ち幅跳びを行ってもらった。その際、ストレッチ、ランニング等は特に行わず、全力で跳躍できる状態になるまで、本人たちの意志で徐々に跳躍の強度を上げていく方式を採った。この跳躍をウォーミングアップ試行とし、その回数の決定は各被検者に委ねた。最後に、5回の全力での跳躍(以下、「全力試行」)を行ってもらった。
ウォーミングアップ試行および全力試行すべての跳躍において、表面筋電図法により、大腿直筋(RF)、大腿二頭筋長頭(BF)、前脛骨筋(TA)、腓腹筋内側(GA)の4つの筋の放電を記録した。表
面電極はビトロードE−150(日本光電杜製、東京)を用い、電極間距離を約20mmとし、得られた活動電位をサンプリング周波数1000Hzで、デジタルカセットレコーダPC−116(ソニー社製、東京)に取り込んだ。各筋の放電時間の決定に際しては、まず、安静時200ms分の振幅の平均値に、その標準偏差の3倍の値を加えた振幅の大きさを求めておき、放電時間の開始は、この振幅を上回る振幅が最初に現れた時刻とし、終了は、この振幅を上回る振幅が最後に現れた時刻とした。活動の大きさはmEMGで表し、算出区間は上記の放電時間とした。また、離地時刻を特定するため、踏み切り地点にフットスイッチを設置し、跳躍前に被検者にこれを母指球で踏むように指示した。
さらに、この実験の被検者のうち4名(年齢20.8±1.3歳、身長170.3±3.9cm、体重61.3±5.3kg、平均値±標準偏差)には、マイオレットRZ−450(川崎重工社製、東京)を用い、主観的に低、中、高の各強度で、5回ずつの等速性足底屈運動を行ってもらった。被検者は長いす状の台上で長座姿勢をとり、右の足関節を専用のアームに固定した。足関節の内角をおよそ100°に保った状態から、検者の合図にあわせ、約15°の足底屈を10秒に1回のぺ一スで行った。強度は低、中、高の順とし、強度が変わる際には3分程度の休憩をはさんだ。足底屈の運動速度は30°/sとした。足底屈中のTA,GAの放電を表面筋電図法で記録し(記録方法・器具は立ち幅跳びの際と同じ)、アームが動いていた時間のTA,GAのiEMGをこの時間で除して、それぞれのmEMGを求めた。

 

研究結果

それぞれの被検者が各試行で跳躍した距離を表1に示した。表から、実際に跳躍距離が漸増していることが確かめられた。
図1は各筋の放電開始の時刻を被検者ごとに示したものである。いずれの試行でも、TAがはじめに活動を開始し、RF、そしてBF,GAという順に活動を開始する傾向がみられた。また、多くの被検者で、TAの放電開始と他の筋の放電開始の時間差が、全力試行に近づくにつれて、大きくな

 

 

 

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